■アイランド■第12回(最終回)■アイランド■第12回(最終回) [ 飛鳥京香の「アイランド」 ]■アイランド■第12回(最終回) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com 「ビィー。アリス。君達は、もう人類を殺すのはやめてくれ。我々 は、我々自身の手で滅びるべきだ。俺がその役目を果たす。幸 この島にまだ仕掛けはある」 「パパ、僕はきっと生き続ける。この地球を変えるためにね。ママ と一緒だよ」 「そうだ。ビィー、お前が、地球に残された唯一の希望かもしれな い」 コロラドは抱いていたビィーをアリスに返す。 そしてアリスに言った。 「いいか、アリス、よく聞いてくれ。ビィーは私の血と肉から生ま れた子供だ。必ず守ってやってくれ。世界は君なちのために開かれ ている。新しい世界がね」 「わかったわ、コロラド。あなたが・最後まで、私達を守ってくれる のね」 「そう言う事だ。俺の持てるすべての力を使って、君達を守る」 「ビィー、覚えておいてくれ、そして君の子孫に伝えてほしい。君 たち、新地球人のために手助けをした旧い地球人がいた事をな」 「わかった、コロラド=パパ」 コロラドは防禦システムSDIIのファイナルバージョンのシス テムをONにした。島のあらゆる防衛機構が動き始める。そして最 後には…… コロラドは、車で、サンチェス島の中央まで、二人をつれていく。 「さあ、ここだ」 アリスに穴を示した。その穴は地下道となり、地下へ向って行く。 コロラドが脱出用に作っておいて電磁気レイルウェイだ。 一人乗りで、数百km離れた大陸に結びついている。このカプセル列車とレ イルウェイは一度しか使えないのだ。 「さようならコロラド」 「さようなら、パパ」 二人は、コロラドに言った。 ビィーをかきいだいたアリスは卵形の列車に乗り込む。 コロラドの姿は闇の中へ消えていく。 二人の体は高速で、新しい歴史へとつき進んでいった。 数分後、サンチェス島は大爆発をおこした。 コロラドの自爆操置か。あるいは、レインツリーの潜水艦が放った核ミサイルか。それとも、機動兵団の核攻撃か、いまだに不明である。 ただし、同時に、アリスとビィーは消滅したとファイリングされ た。 機動兵団のほとんどが全滅されたともファイリングされた。 アリス=ママはギシギシとぎこちない動きをしている。 古い材料 ばかりなのだ。 さてヽもうおわかりかもしれないー私ビィーはこの地球世界でこ軒 たの租となったのだ。 覚えておられるだろうか。 私ビィーはパパ、コロラドに、キスをした。その時、私の意識の 内に、コロラドの意識をコピーし、取り込んだのだ。 だから、私ビィーは。コロラドでもある。 私コロラドは、自らの体の滅びる瞬間を感じ、アイランドが消滅す る瞬間も見たのだ。 コロラドの体が滅んだ事は、少なくとも、サンチェス島の人々の つぐないにはなったかもしれない。コロラドの体はサンチェス島と 心中したのだろう。 私ビィーがいかに、苦難の道を歩み、新人の租となったのか、そ れは次の機会に語ろうと思う。 (完) 1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ |